北陸編

しなざかる越

万葉集時代の北陸は越の国と呼ばれ 
越前(福井県・石川県の一部)、越中(富山県・石川県の一部)、越後(新潟県)に別れていた。
平安時代になって加賀・能登(石川県)が独立した。

越の国への道は近江湖北 愛発(あらち)の関から始り越前南条山系の山々を越えてやっと辿り着く 都からは遥か遠い地方だったため「天ざかる鄙」と呼ばれた。冬は雪に覆われ曇りがちの風土に全く情報のない当時、
赴任した都の官人達は遠い距離感に深い望郷の念を感じたことでしょう。

越の国で詠われた歌の大半は天平18年(746)から5年間、大伴家持(29歳~34歳)の越中国守在任中の歌で特に優れた歌が多い。

 しなざかる 越に五箇年(いつとせ) 住み住みて 立ち別れまく 惜しき宵かも  (巻19-4250)

 春の苑(その) 紅にほふ 桃の花 下照る道に 出で立つをとめ         (巻19-4139)
 
 もののふの 八十をとめらが 汲みまがふ 寺井の上の堅香子(かたかご)の花  (巻19-4143)